放言録

放言・妄言・狂言

小型特殊免許を取得した

1 はじめに

 本稿は、筆者が小型特殊免許(以下「小特」という。)の取得を決意し、交付に至るまでの概略を説明したものである。なお、本事例は埼玉県内のものであり、他都道府県では各種取り扱い、手続き等が異なる可能性があることに留意されたい。

 

2 取得に至った経緯

 大学を辞めて以来、手元にある身分証は以下の3つとなった。

① マイナンバーカード

② 職場の身分証

③ 保険証

 しかし、いずれの身分証も、普段使いには支障がある。まず、①であるが、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下、単に「法」という。)によって、マイナンバーは「特定個人情報」と定義され、特定個人情報を収集することは、法第19,20条によって制限されるに至っている。つまり何が起こるかというと、本人確認のために提示された身分証の番号を控えている事業者等にとっては、マイナンバーカードの提示を受けても、法により発行番号にあたるマイナンバーを記録することはできないこととなる。よって、本人確認において、マイナンバーカードの利用ができないという事態が一部で生じた。マイナンバーカードは、居住地の市役所等で発行申請ができ、手数料は無料であることが多いなど、身分証として入手するハードルは低いが、本人確認のために利用できない可能性が比較的高いことを考慮すれば、不完全といえる。

 それに加えて、地方自治体ではなく地方公共団体情報システム機構が作成する関係上、交付申請からおおむね1ヶ月程度の時間がかかることも、至急顔写真付きの身分証が必要となった場合を考えれば、問題点として挙げられる。

 ②については、職業を明らかにする必要がないシチュエーションで使えない点と、紛失した場合に処分を受ける可能性が高いので、軽々に持ち出したくないという点、そして住所が記載内容に含まれていないというのが本人確認に用いるにあたっての問題点となる。みだりに職業を知られたくないというのは特に公務員として勤務する各位に同意いただけると思うが、住所が記載されていないというのも身分証として問題が大きい。もはや協力企業での割引利用時や共済組合での手続程度でしか使えない。

 ③については、住所は記載されているがあくまで保険証であるので、顔写真が記載されていないのに加えて、②と同じく職業を明らかにすることとなる。また、サイズが大きい(旧型の保険証、現行後期高齢者医療被保険者証と同サイズ)のため、携行が面倒なのがネックとなる。

 以上の事情を考えれば、新たに入手しようとする身分証は、①顔写真付き、②住所が記載されている、③カードサイズ、④容易に入手できる、⑤一般的である これらの条件を満たさなければならない。ここまで読んでいただければお分かりになると思うが、これらの条件に当てはまる身分証は、運転免許証の中の、原付か小特に限られると考えるのが適当である(外国籍者については在留カード等が含まれるだろう。)。そして私は原付に現状乗る気はないし、夏場に3時間程度の講習を屋外で受けるのも面倒くさい。それに、乗りもしないのに4,500円の講習手数料を納付するのはもったいない。

 極めつけとなったのが、平成30年度運転免許統計に示された、小特所有者数の少なさである。同統計によれば、20歳未満で運転免許を持つ者の合計は88万3574人である。この中で、小特を保有する者の数は292人となっており、同年代の免許保有者の約0.03%しか小特保有者はいないこととなる(小特取得後に上位免許を取得した者を除く。)。これらの事情は、私に小特受験を決意させるに十分な要素となった。

 

3 受験準備

 小特試験のための参考書は存在しないが、一般には多くの問題は原付の試験と類似していると言われている。そこで、古本の原付試験参考書(約500円)を購入し、数周ほど読み、模擬問題を解くという対策を取ることとした。失効させてしまったが、過去に原付免許を保有していたこともあって、当時の試験対策と概ね同じである。しかし、紛らわしい記述が続く免許試験特有の文法に苦戦することとなり、1日の対策で受験しようと考えていたところ、これでは不合格は確実と悟り、1日延期。模擬試験で合格点の9割を取れるようになったのは当日深夜の話であった。

 なお、問題については原付とは一応異なるため、小特のスペック(最高速度、全長、最大積載量等)、適用される交通法規については別に覚える必要がある。その他、自動車のため原付とは違い自動車専用道路は走行可、自動車通行止め標識があれば入れない、二段階右折は不要等。

 

4 受験、交付

 朝7時前から免許センター最寄りの鴻巣駅に向けて移動を開始する。なぜあんな中心部から遠い場所に免許センターを作ったのか、さいたま新都心の近辺ではだめだったのか、などと埼玉県の開発計画に対する恨みを募らせていたところ、電車は鴻巣駅に到着した。

 話題は急に飛ぶが、声優の会沢紗弥さんはここ、鴻巣の地で免許を取得した。つまり私にとって埼玉県で免許を取得することは、核廃絶に並ぶ人類の悲願である女性声優になる第一歩と言っても差し支えないだろう。

 約2kmを歩き、免許センターに到着する。最初の相談窓口から係員がタメ口で、優れたわが国のおもてなし文化の片鱗を体験する貴重な機会となった。ちなみに、埼玉県警免許センターに外国人への対応が差別的とレビューを寄せていたとあるユーザーのプロフィールに飛ぶと、免許センターと東京入管に対する2つのレビューを残していた。日本人に対しても似たような対応なのだから差別でもなんでもないと思うのだが。その中では別の警察官が笑顔で採用試験の勧誘をしているのだから、警察という組織はよくわからない。

 そんなこんなで手続きは無事に終わり、受験となる。小特だからといって手続時に動揺されるとかそういったことはなく、あくまで淡々と申し込みは完了された。同日の受験者が私含め3名いたので、それほど珍しくはないのかもしれない。試験自体は真面目に問題集と模擬問題を数周程度こなしていればなんとかなるだろうなといったレベルであった。このあたりの感触も、原付とさして変わらないように思える。

 そして合格者発表。直前まで9割を取れずに、模擬問題における免許文法に苦しめられたことから疑心暗鬼になっていたこともあり、若干自信はない状態であったが、蓋を開けてみれば96点で合格であった。合格者は試験場に再度戻され、免許交付手続に移る。原付受験者の場合、講習を受けていない者は午後から受講する必要があるために交付は16時以降になるとのことだったが、講習のない小特受験者は写真撮影をして交通安全協会の勧誘をスルーした後に交付手数料を納付、ただちに免許が手渡されたため、解放は12時過ぎとなった。

 

5 参考

・拘束時間 約3時間半(移動時間除く)

・費用(概算) 証明写真プリント代 80円

        住民票手数料 200円

        参考書費用 500円

        受験手数料 1,500円

        交付手数料 2,050円

            計 4,330円(交通費除く)