放言録

放言・妄言・狂言

裁判傍聴記(東京地裁:30.12.25)

 世間一般はクリスマス気分に浮かれているのに霞ヶ関では陰気な顔をした人間くらいしかいない。かく言う私もその1人なので、自由な身で迎える実質最後の12月25日は傍聴に費やすこととした。

 

被告人:50代男性(職業:元タクシー運転手)

罰条:刑法第236条(強盗)

 

 平成30年11月6日に城北信用金庫の支店に目出し帽を被って立ち入り、ポケットに掃除用ブラシを入れ、刃物を持っているかのように装った状態で女性職員に金を出すよう要求した。そして1千万円分の札束を受け取り支店を後にしたところ、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されたという次第。なお、受け取った札束は防犯用に裏と表のみを真札にしていたため、実際に窃取した金額は2万円とのこと。

 被告人質問では犯行に至った理由について問われる。本人や検察官いわく、スナックや居酒屋で酒を飲み続けた結果金が足りなくなり、消費者金融や友人から2~300万を借金の上、同居する母親からも数百万円の金を無心したもののついにそれも尽き、借金返済のために犯行に至ったとのこと。弁護人も助け舟か断酒やアルコール依存の治療意思、借金の整理意思の有無を問うもいずれも「そういう方向で努力していきたい」との返事にとどまり、断酒については通院や施設の利用に消極的など、そもそも意思は弱い印象。社会復帰後の仕事のあてについても、「考えていないとの返答で、見通しの甘さを伺わせる。そもそも銀行強盗という発想に至った経緯も、「銀行なら金があるだろう」という安直な考えに基づくものなので、生来のものかもしれない。

 求刑は懲役5年。弁護人は実際に凶器は持っていなかった、奪った金額は2万円で即逮捕されたため損害は発生していない、母親が差し入れをする(なお面会はしていないよう)という更生を支援する態度が見られることなどから執行猶予を求め即日結審。判決言い渡しは翌1月上旬となった。