行旅帰宅人
修学旅行ならぬ怠学旅行として推し声優の出身地たる北海道へ31年1月15日~同18日の日程で旅行をしてきた。
オタクがノープランで北海道旅行をしている様子を記録してもあまり面白くないので、とりあえず常磐線で仙台から茨城県南まで帰宅を試みるなんてやるものじゃないというのを以下、うろ覚えだが備忘録を兼ねて書いていきたい。なお、どこからどこまでが厳密には常磐線ではなく東北本線かなんて覚えていないし覚える気もないので特に区別はしない。
仙台フェリーターミナルから一番近いのは多賀城駅...と本稿を書くまでは思っていたが、隣の中野栄駅じゃないか。ノープランどころかろくにリサーチもしない結果がこれである。ただ歩いていけない距離というわけではない。少し歩くとイオンモールがあるので、仙台から名古屋/苫小牧まで乗るのなら事前の物品調達に適しているだろう。遠いけど。
というわけで歩いて多賀城に到着し、最寄り駅までの切符を購入する。遠方なので「上野経由(注:新幹線利用)ですか?」と問われるも、常磐線で帰ると伝えて発券してもらった。ここで初めて知ったが、浪江-富岡間の代行バスはずいぶん本数が少ないらしい。少ないらしいことは知っていたが、具体的な時刻を改めて調べなかったことが後々大きく響いてくることになる。多賀城周辺は仙台のベッドタウンになっているのか、駅周辺には住宅地が立ち並んでいた。駅の施設もかなり新しいものだったが、同じく被災によるものだろう。
仙石線に乗って仙台まで赴く。仙台駅でほぼ全員が降りるので混雑の中歩くことになるが、コンコースにまで出てしまえば大したことはない。吉祥寺駅のように狭いくせに利用客はやたら多いところに慣れていれば楽なものである。
時刻も調べないできたので30分以上待つことになったが、間に合わないよりはいい。昼間の乗車だったので空いているかと思ったところ、立ち客もいるくらいの混雑になる。福島までを繋ぎ、本数も少ないようなので利用が集中しやすいのだろうか。
この区域は比較的沿岸を走行するせいか、強風が吹きやすいようで、原ノ町まで向かう1時間数十分の間に2回ほど強風による徐行の打ち合わせのためとして停車し、結局20分程度の遅れで終点の原ノ町に到着することになった。ただし浪江行きは待ち合わせをしてくれるようなのでここでまた長く待つこともなく、浪江行きに乗り換えができた。
今になって気づいたが、原ノ町がSuica利用範囲の終点で、あとはいわきまで使えないらしい。旅客営業規則だのは全く知らないが、代行バス乗り換えのために改札を出入りする必要があるので注意が必要だろう。あと、原ノ町周辺はそれなりに店も多いようなので、本数の少ない代行バスまでの時間調整に適しているのではないだろうか。
【同 原ノ町-浪江】
クロスシートになったのでやっとリラックスして移動できる(仙台からはセミクロスシートだったが、体格の関係上乗客が多いと使えない)。乗客も原ノ町から先になるとかなり少なく、乗っていた車両には私1人しかいなかった。ただ浪江までは30分程度なので景色を眺めているうちに終点に到着した。
【浪江にて】
福島の状況を一切知らないので、車窓から見えてくる浪江町の景色を見て「ずいぶん住居があるな、これなら2時間もすぐに潰せそう」とのんきな考えを持っていたが、家屋が近くなってくるにつれ異変に気づくことになった。道には誰もおらず、家は一切整備されていないし、ガラスが割れたままのところもある。平成23年3月11日のまま、浪江町は止まっていた。当然車窓から見えた、あるいは地図に載っていた店が依然として営業しているわけもなく、近辺で営業しているらしいローソンまで、約1km歩くことにした。道中、もちろんあまり通りは多くないものの、建設業者の車両や、パトカーの通行が目立つ。どうやら8年近くも家主が戻らない家への犯罪を警戒してパトロールを強化しているらしい。そして役場周囲にたどり着いた。この周辺は国道も通行が多く、人もそれなりにいる。役場周辺に商業機能も集中しているのだろうか。しかし、駅前の通りはその多くが主のいない状態になっている。復興関連の事業に携わる業者向けに、国道6号線沿いの役場周辺が町の中心になっているという印象を抱いた。
駅をすぐに出ていったので気づかなかったが、構内には暖房付きの待合室がある。スナック程度なら自販機で購入できるので、せめてここで待てばよかったと気づいた後に後悔した。
場所が場所だけにのんきに見物するようなものではないし、営業している店も少ないので、時間調整なら相馬や原ノ町でするべきだろう。
観光バスが代行となる。16時台発だったので、通学の高校生も散見されたが、人は少なく10名強。運転士のほかにガイドが乗務しており、乗車時にはJRの切符を確認される。「車内での撮影はマナーとモラルを守りましょう」という張り紙があり、出発時に「車内とパソコン(注:帰還困難区域を走行するため線量情報が表示される)の撮影を禁止する」旨放送がされた。観光気分で来た乗客が何か問題を起こしたのだろうか。
そうこうしているうちに富岡着。海沿いなので津波の被害を受けたらしく、駅舎を始め周辺に住宅や店舗が再建されていたので結果として浪江よりも再興が進んでいる印象を受ける。
【常磐線 富岡-いわき】
過去に常磐線特急で使われていた車両が普通列車として使われているらしい。おかげで乗り心地もよく、混雑もそれほどではないので快適にいわきまで移動することができた。基本的にはボックスシートになっているが、自分で転換して2人掛けにすることが可能。来年の浪江-富岡間の運転再開以後は、23年以降運転していない特急が当地を走る日が来るのだろうか。
【常磐線特急 いわき-水戸】
とはいえさすがに疲労がたまるので、もうよくわからない敗北感の下特急に乗ることにした。この時間帯だとちょうど目的地には停まらないので、水戸で土浦まで特急を乗り継ぎ、土浦から快速で最寄りまで戻る計画。さすがに現行の特急は快適性もさらに高く、一日中使ったせいで心もとないスマホの充電も座席コンセントでできる。ロングシートで2時間半以上揺られるのに比べれば特急料金なんて安いもの...ではあったが、水戸駅までとにかくよく停車する。品川行きなので水戸までの比較的短距離の利用者にとってみれば課金するほど速達性があるのか?と考えてもみたが楽を求める脳には勝てなかったので考えるのをやめた。
【常磐線特急 水戸-土浦】
車両の感想は同じ。停車駅も少ないから早いね、とっきゅうすごい。
【常磐線 土浦-茨城土民駅】
この時間帯の上りは乗客も少ないので楽に移動できる。それに乗車時間も短いので大した不安でもない。そうこうもできないうちに最寄りに到着し、地獄みたいな疲労感を味わった旅は終わり...ではなかった。
なんと降車する際に衣服や書籍が入ったバックパックを疲れからか網棚に置いてきてしまい、その上追いつける特急や特快もない。このまま上野まで送られることになってしまったバックパックを回収しに、駅員に捜索手配を依頼して次の上野行き電車に飛び乗るはめにあった。
夜間の上りに乗客なんてほとんどいないのでボックスシートを貸し切りにできるのはいいが、バックパックを持ち去られたらどうしたものか、私服がなくなるのも困るしそこそこ高かった『検察講義案』を買い直さなきゃいけないのか...などと考えながら上野駅に着いたが、到着して改札口で問い合わせている間に駅から連絡があり、どうやら車内清掃で回収されていたらしいとのこと。清掃員と駅員各位にこの場で御礼申し上げたい。そして折返し列車に飛び乗り最寄りまで帰還。やっと旅が終わった。
感想
名古屋までフェリーで行って帰ればよかった。